2022年にもなってAK240SSをベタ褒めし、語る

ポータブルオーディオ

AK240SSを覚えているだろうか。当時36万と非常に高価で発売されたAK240のステンレスモデルだ。

私は高校生の頃にこのDAPを初めて聴き、その美しさに惚れてしまった。しばらくして、金銭的にも余裕が出てきたので、中古市場に流れてこないか綿密にチェックしていたが、メンタル面の不調が重なるなどし、購入と試聴のタイミングを逃してしまった。それから1年ほどが経過し、偶然中古品が販売されていることを確認したため即購入。後先考えずに、衝動に突かれて購入したことはやや反省しているが、後悔はしていない。これを逃したら買えないと怖気づいたからだ。

なお、当サイトでは「ですます調」での統一を原則としているが、今回の記事は「私が語ること」が主題であり、例外的に「だである調」で執筆することにした。さて、レビューではなく、AK240SSのよさを語っていくとしよう。

蛇足だが、レビュー記事も公開済みだ。こちらも是非併読していただきたい。

さて、AK240SSのデザインからは時代を感じる。現在の機器では考えられないようなUI、そして無骨さだが、そうでありながらもどこか洗練されている。これはまるでiPhone4~iPhone5を彷彿とするような美しさだ。現代にはそぐわないデザインではあるが、当時ならではの雰囲気というか、よさも醍醐味だろう。勿論、私はこのデザインがすきだ。

音量を調整するダイヤルとして機能しているボリュームノブは黎明期ということもあって、AK240シリーズではノブの不良が頻発している。幸いにも、私の購入個体は正常動作品だったが、いつ不良が起きてもおかしくはないだろう。玉に瑕なところではあるが、それがまた愛おしかったりもする。

本体を持つとステンレスの重みがズッシリとくる。高級感のある重みではなく、明らかに重いものを持っているといった感じで、そういった上品さはない。それはそうと、このデザインで操作していると、なんとも不思議な感覚に陥る。ベゼルの薄さとかではなく、本体を角ばらせることで美しく魅せられているような…。

充電/転送端子は現在では見かけなくなったMicro-bだ。ほぼType-Cで統一されている我が家だが、AK240SSのためにMicro-bの専用ポートを導入した。現行品の掟が通じないようなところもまた、特別感があっていい。こういった、気持ち的な味付けがあると高音質に感じるプラセボを味わえるからだ。(オカルト)

もはや本記事がレビュー記事といっても過言ではないが、音質について語っていこう。AK240SSの音は美音系にカテゴライズされる。レビューの方でも書いたのだが、ステンレスの筐体といえば「カッチリ」とした音が特徴的で、好きな人は好きだが嫌厭されがちである。その金属筐体の音がきつく感じる人も多々いるわけだ。

しかし、AK240SSは他のステンレス製DAPとは一線を画している。音がシャープに鳴るステンレスの特性を活かすことで、一音一音を繊細に鳴らし、美音を実現するのだ。この妙なチューニングを初めて聴いたとき、私は鳥肌が立ってしまった。かつてのフラグシップ機であったSP2000にも感動したわけだが、AK240SSはそれすらも凌駕したと記憶している。それから、オーディオは金額じゃないという考えが根付くようになった。この体験は後々、大きく役立つことになるが、それはまたの機会とする。

この説明だけでは終われない。AK240SSの神髄は「デジタル臭くない」これに尽きる。即ち、ほどよいアナログ感を残しつつ、美しくも繊細に鳴らしてくれる。当時の限界ということもあったのだろうが、やはりこの音には引き込まれる。現代のポータブルオーディオ製品では珍しくなってしまった、忘れ去られた音ともいうべきか。とはいえ、忘れ去られても「製品の音」は風化しない。他のデジタル機器と異なり、定数的な評価が全てではないオーディオ製品のいいところである。即ち、聴けばその製品ならではのよさがあり、絶対評価、そして相対評価までもが可能なわけだ。

これは、私がオーディオ趣味を継続している理由の1つでもある。新製品が必ずしもいいわけではない。長年、PC関係を趣味としていた私にとって、理想郷のような世界でもあったわけだが、なんだかんだ新製品を買ってしまうのは性だろう。

音質の話に戻すとしよう。各音域についてだが、AK240SSは美音を意識しているだけあり、中高音域のチューニングに秀でている。むしろ、これを語らずして何を語ろうというほど、中高音域が繊細でひとつひとつのタッチを丁寧に鳴らす。

ピアノ音源や女性ボーカルとの相性は言わずもがな最高だ。それでいながら、低域もシッカリと出る。ややドンシャリっぽいところはあれど、ステンレスにありがちな「カッチリ」さは薄く、1音が深く沈んでゆくタイトさなのも美音らしくていい。

音場はというと縦に広い。現行機種でいうとSA700に近い音場表現だろうか。それをより狭くし、自然な定位感にした。そして、フワッと出ては消える……。そんな感じだ。AK380のボーカルが一歩出たところにいて、後ろで演奏するような表現ではない。中心にボーカルがいて、その周りから音が湧き上がる印象だ。 

私の好みだが、AK240SSはFinal audio designのHeaven VIIと組み合わせると真骨頂ともよべる音が鳴る。両機とも、2014年に発売されている(厳密にいえばAK240の通常モデルが2014年、ステンレスモデルは2015年発売だが、筐体素材以外に差異があるわけではないため、2014年という表現を用いることをご容赦願いたい)。

音には当時の流行りというものがあり、各社はそれを土台に製品を作る傾向がある。そのような時代背景も相性として関係しているのだろう。やはりこの組み合わせは、私が追求した音の中でも未来永劫ブッチギリの相性だ。例えるのならば、アナログ感のあるピュアオーディオの音とでもいうべきか。2022年になっても聴きたくなる魅力がある。

AK240SSは花嫁と形容するのが的確なほど美麗な出音だ。即ち、例外はあれど、基本的にはどんなイヤホンでも美しく鳴らしてくれる。これもまた、魅力の1つではないだろうか。一音の繊細さにウットリとする。音は変わらない。これがオーディオにおける最大の魅力であり、楽しむための秘訣なのだろう。世界は目まぐるしいほどに変わっている。しかし、自分の好きな製品の音は変わらない。そういった、変わらない安堵感というものが現代人には必要なのではないかな?と私は心からおもう。

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